実家への帰省で気をつけたい、高齢の家族への感染対策
夏休みやお盆は、離れて暮らす家族と久しぶりに会える大切な機会です。
「孫の顔を見せてあげたい」
「元気なうちに、できるだけ会いに行きたい」
そう思う一方で、気になるのが感染症ではないでしょうか。
帰省では、電車や新幹線、飛行機、サービスエリアなど、普段より多くの人と接します。さらに実家に着くと、食事を囲み、近い距離で会話をし、同じ部屋で長い時間を過ごします。
自分や子どもにとっては軽い風邪でも、高齢の家族にとっては重い病気になる原因になることがあります。
ただし、感染を心配するあまり、家族で過ごす時間を諦める必要はありません。
大切なのは、完璧にウイルスを避けようとすることではなく、帰省前・移動中・実家での過ごし方を少しずつ見直すことです。
今回は、高齢の家族と安心して会うために、帰省時に取り入れたい感染対策を分かりやすくご紹介します。
高齢の家族に会うときは、いつもより少し慎重に
帰省するときは、普段のお出かけより少し丁寧な感染対策を意識しましょう。
高齢になると、若い世代に比べて免疫機能や体力、回復力が低下しやすくなります。また、心臓病、糖尿病、腎臓病、呼吸器疾患などの持病がある場合は、呼吸器感染症にかかったときに症状が重くなる可能性があります。
厚生労働省も、急性呼吸器感染症の中には、高齢者や基礎疾患のある人が感染すると重症化する可能性があるとして、高齢者と会うときや大人数で集まるときには、マスクの着用を含めた感染対策を呼びかけています。詳しくは、厚生労働省「今冬の急性呼吸器感染症(ARI)総合対策」をご確認ください。
「自分は元気だから大丈夫」と思っていても、感染症によっては、症状が出る前や症状が軽い段階で周囲に広げてしまうことがあります。
高齢の家族を守るためには、本人に対策を求めるだけでなく、会いに行く側がウイルスを持ち込まない意識を持つことが大切です。
帰省前は家族全員の体調を確認する

帰省前に最初に行いたいのが、家族全員の体調確認です。
出発当日の朝だけではなく、できれば数日前から次のような変化がないか見ておきましょう。
・発熱や寒気
・咳、鼻水、のどの痛み
・強いだるさ
・頭痛や関節痛
・下痢や吐き気
・いつもと違う食欲低下
特に子どもは、自分の体調をうまく言葉で説明できないことがあります。
「何となく元気がない」
「いつもよりよく寝る、寝られない」
「食べる量が少ない」
このような小さな変化も、体調を崩す前触れかもしれません。
発熱がなくても、咳やのどの痛みなどの症状がある場合は、帰省の日程をずらすことも検討しましょう。
夏はエアコンによる冷えや乾燥、室内外の温度差などによって、のどや鼻の調子を崩すこともあります。夏に風邪のような症状が起こる理由については、梅雨に風邪をひきやすい理由と体調管理のポイントもあわせてご覧ください。
日程を変更するのは残念ですが、「会いに行かない」のではなく、「元気になってから安心して会うため」と考えてみてください。
実家に高齢の家族や持病のある家族がいる場合は、出発前に電話で体調を伝えておくのもおすすめです。
帰省する側だけで決めるのではなく、実家の家族とも相談しながら判断することで、お互いに安心して会う準備ができます。
移動中に気をつけたい3つのポイント

帰省当日は、多くの人が利用する交通機関や施設を通ります。
特に意識したいのは、マスク、手洗い、顔を触らないことです。
まず、混雑した電車や新幹線、飛行機、駅構内などでは、状況に応じてマスクを活用しましょう。
マスクは、咳やくしゃみによる飛沫が周囲に広がるのを抑えるだけでなく、
周囲から吸い込まないために役立ちます。
着用するときは、鼻からあごまで覆い、顔との間に大きな隙間ができないようにしましょう。
特に、移動中に咳やのどの違和感がある場合や、高齢の家族に会う直前は、マスクを着用しておくと安心です。
次に大切なのが手洗いです。
移動中は、次のような多くの人が触れる場所に接します。
・電車やバスのつり革
・階段やエスカレーターの手すり
・券売機や自動販売機
・エレベーターのボタン
・トイレのドア
・サービスエリアのテーブルや椅子
これらに触れただけで、すぐに感染するわけではありません。
ただし、手に付着したウイルスが目・鼻・口に運ばれると、感染の入り口になることがあります。
食事の前、トイレの後、実家に着いたときには、石けんと流水で手を良く洗いましょう。手洗いの方法や消毒との使い分けについては、厚生労働省「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」でも詳しく紹介されています。
すぐに手を洗えない場合は、手指消毒剤を活用する方法もあります。ただし、手が目に見えて汚れているときは、石けんと流水による手洗いが基本です。
そして、意外と忘れやすいのが、手で目、鼻、口を触らないことです。
スマートフォンを触った手でお菓子を食べたり、眠っている子どもが鼻や口を触ったりすることもあります。
完璧に顔を触らないようにするのは難しいものです。
だからこそ、食事の前や実家に到着したタイミングなど、ポイントを決めて手を洗うことが現実的な対策になります。
実家に着いた直後の行動が大切
実家に着いたら、すぐに家族と抱き合ったり、食卓についたりしたくなるかもしれません。
その前に、まず手を洗いましょう。
可能であれば、次の順番を習慣にすると安心です。
玄関で荷物を置く
↓
石けんで手を洗う
↓
上着を脱いで片づける
↓
スマートフォンなどを必要に応じて拭く
↓
家族にあいさつをする
帰省中に使ったバッグやスマートフォンには、移動中に多くの手で触れたものから汚れが付着している可能性があります。
ただし、玄関や荷物、床など、家中を何度も消毒する必要はありません。
スマートフォンやよく触る持ち物を必要に応じて拭き、食事前やトイレ後の手洗いを丁寧に行うほうが、日常生活では続けやすい対策です。
消毒を増やしすぎると、手荒れや家族の負担につながることもあります。
大切なのは、すべてを無菌にすることではなく、手から目・鼻・口へウイルスが運ばれる流れを減らすことです。
小さな子どもがいる場合は、「おじいちゃん、おばあちゃんに会う前に手を洗おうね」と、帰省前から伝えておくとスムーズです。
食事と会話の時間にできる工夫

帰省の楽しみといえば、家族で囲む食卓です。
一方、食事中はマスクを外し、近い距離で会話をするため、呼吸器感染症が広がりやすい時間でもあります。
だからといって、無言で食べる必要はありません。
次のような小さな工夫を取り入れてみましょう。
・食事の前後に窓を開ける
・エアコンを使いながら、ときどき換気する
・大皿料理には取り分け用の箸を用意する
・コップや箸を共用しない
・咳やくしゃみが出る人は席を少し離す
・大人数の場合は、席の間隔を空ける
・長時間の会食になりすぎないようにする
特に夏は、暑さから窓を閉め切りがちです。
一般的な家庭用エアコンは、室内の空気を冷やして循環させるもので、窓を開けたときのように外の空気と入れ替えるものではありません。
暑い日は、窓を長時間開けたままにするのではなく、冷房を使いながら短時間の換気を行いましょう。
換気扇を回したり、離れた位置にある窓やドアを開けたりすると、空気の通り道をつくりやすくなります。
ただし、高齢者は暑さを感じにくく、本人が気づかないうちに熱中症になることがあります。
感染対策のために室温が上がりすぎてしまっては、本末転倒です。
冷房を止めずに換気を行うなど、熱中症対策と感染対策を無理なく両立させましょう。
泊まりの帰省では換気と部屋分けを意識する
日帰りではなく、数日間泊まる場合は、家の中で一緒に過ごす時間が長くなります。
できる範囲で、寝室を分けると安心です。
特に、移動してきた家族と高齢の家族が同じ部屋で眠ると、長時間近い距離で過ごすことになります。
部屋数に余裕がない場合は、次のような工夫をしてみましょう。
・布団の間隔を空ける
・頭の位置を互い違いにする
・就寝前と起床後に換気する
・咳などの症状がある人は、可能な範囲で別室にする
・寝具や枕を共用しない
洗面所では、共用のタオルを使わず、それぞれのタオルを分ける方法もあります。
特別にペーパータオルを用意しなくても、色や柄の違うタオルを人数分用意するだけで区別しやすくなります。
歯みがき用のコップや飲み物のコップも、できるだけ共用を避けましょう。
一方で、実家の高齢の家族に細かなルールをたくさんお願いすると、疲れさせてしまうことがあります。
「窓を開けて」
「そこを触らないで」
「マスクをして」
と何度も注意するより、帰省する側が手洗いや換気を自然に行うほうが、お互いに気持ちよく過ごせます。
感染対策を押しつけるのではなく、「みんなで元気に過ごすために、少しだけ気をつけよう」という雰囲気をつくることも大切です。
体調に異変があったときの対応
帰省中に発熱、咳、のどの痛み、強いだるさなどが出た場合は、「移動で疲れただけ」と思わず、早めに高齢の家族と距離を取りましょう。
可能であれば部屋を分け、共用スペースではマスクを着用します。
換気を行い、タオル、コップ、寝具などの共用も避けましょう。
高齢の家族に症状が出たときは、発熱や強い咳だけで判断せず、普段と少し違う様子がないか注意してください。
高齢者は、感染症にかかっても高熱が出ず、最初は次のような小さな変化だけが見られることがあります。
・いつもより口数が少ない
・食欲が落ちて、食事を残している
・お茶や水をあまり飲まない
・「少しだるい」「体が重い」と話す
・軽い咳や鼻水が続いている
・声がかすれている
・いつもより横になっている時間が長い
こうした変化が続くときは、「年齢のせい」「移動で疲れただけ」と決めつけず、体温や呼吸の様子、食事や水分が取れているかを確認しましょう。
特に、息苦しさがある、水分が取れない、ぐったりしている、持病の症状が悪化している場合は、早めにかかりつけ医や医療機関へ相談してください。
帰省前に、かかりつけ医の連絡先、休日診療所、服用している薬、持病などを家族で確認しておくと安心です。
帰省前に確認しておきたい感染対策チェックリスト
出発前に、次の項目を家族で確認してみましょう。
・家族全員に発熱や咳、のどの痛みがない
・高齢の家族の体調を事前に聞いている
・必要な人数分のマスクを用意した
・手指消毒剤やウェットティッシュを用意した
・移動中の食事前に手を洗える場所を確認した
・実家に到着したら、最初に手を洗うことを子どもにも伝えた
・実家で寝る部屋や布団の配置を確認した
・かかりつけ医や休日診療所の連絡先を確認した
・体調が悪くなった場合に、日程を変更する心づもりができている
全部を完璧に準備する必要はありません。
家族の年齢や体調、移動手段、実家の間取りに合わせて、取り入れやすいものから選びましょう。
まとめ
高齢の家族への感染を防ぐために、特別なことをたくさん行う必要はありません。
大切なのは、次のような基本的な対策を丁寧に続けることです。
・帰省前に家族全員の体調を確認する
・症状があるときは日程変更を検討する
・混雑する移動中はマスクを活用する
・実家に着いたら、まず手を洗う
・食事や会話の時間は換気を意識する
・タオルやコップの共用を避ける
・体調が変化したら早めに距離を取る
感染対策は、家族との時間を制限するためのものではありません。
久しぶりに会う両親や祖父母と、安心して食事をし、会話を楽しみ、笑顔で過ごすための準備です。
「持ち込まない」
「広げない」
「体調の変化を見逃さない」
この3つを意識しながら、無理のない対策で大切な家族との時間を楽しみましょう。









